7歳から芸術に集中できる!タレンティッド教育に特化したイギリスのボーディング(全寮制)スクール

7歳から芸術に集中できる!タレンティッド教育に特化したイギリスのボーディング(全寮制)スクール

イギリスの上流階級における教育のスタンダードともされているのが、ボーディングスクール(全寮制の寄宿舎学校)です。歴史・格式ともに世界レベルで著名な学校が多く、なかには芸術に特化した学校もいくつかあります。今回は、名高いロスチャイルド家の邸宅を学校に改装し舞台芸術を教えるトリング・パーク・スクール・フォー・ザ・パフォーミング・アーツと、有名な音楽家を選出しているパーセル音楽学校にフォーカス。そこで実践されている芸術を軸としたタレンティッド教育を紹介します。

舞台芸術に特化したトリング・パーク校は築300年以上の元邸宅

ロンドン郊外の高級住宅地であるハートフォード・シャーにあるトリング・パーク本校は、1919年に開校以来、舞台芸術に特化した私立校として有名です。校舎は大富豪のロスチャイルド家がかつて所有していた築300年以上経った邸宅ということで、豪華な暖炉があるリビングルームは現在ダンススタジオに改装して使っています。童話や小説に出てくるような隠れ扉や秘密の通路などが残っており、子どもにとっては冒険心がくすぐられる構造です。入学は7歳からですが、寮生活が始まるのは9歳からです。

入学する際の試験は面接と身体能力チェックなどで、とくに厳しい内容ではありません。外国からも留学生を受け入れている長い歴史があり、日本を含め、香港、シンガポール、タイ、ほかのヨーロッパの国々やアメリカからの留学生がいます。

初等教育期間の11歳まではダンスやバレエ、演技、音楽、歌が3分の1を占める時間割をこなし、中等教育の受験の準備をします。学業の授業内容はほかの私立校の方針と同じで、国語、算数、ICT、理科、地理、歴史、宗教学、美術、外国語、体育です。同校の中高等科に進学する場合でも、外部受験生と同様にオーディションと学力テストを受けなくてはなりません。

日本やほかのイギリスの学校と同じく3学期制で、全寮制の1学期分の学費は8,730ポンド(日本円で約140万円)です。これに、制服代(体育着、バレエ着なども含む)、教材費、遠足代、テスト代、楽器の個人レッスン代などが別にかかります。また、学期間には1週間から2週間の学期休みがあるため、自宅が遠い場合は寮を出ている期間の費用も考えなければなりません。

楽器演奏者を目指す子どものためのパーセル音楽学校

トリング・パーク校がダンス・歌・演劇の専門学校であるのに対し、パーセル音楽学校は楽器演奏者を目指す子どもたちの学校です。同じく緑が多いハートフォード・シャーに位置し、トリング・パーク校よりもロンドンに近い場所にあります。1962年の開校当時はロンドン市内に校舎がありましたが、1997年に現在の校舎に移動しています。寮、校舎、広大な芝生が隣り合わせになっており、年齢が小さい生徒でも生活しやすい印象です。

入学は10歳からで、合否は楽器演奏のオーディションで決まります。年齢が低い子どもは弦楽器かピアノの専攻がほとんどで、現在のテクニックよりも今後伸びる可能性を見込んで入学が許可されます。その後もどれだけ練習するかは生徒次第という教育方針で、学校側が強制するような校風ではありません。寮生活が始まるのも10歳からです。

海外留学生も10歳から受け入れていて、日本を含むアジアの国々やロシアから留学する生徒もいます。ビザや見守りのサポートもしっかりしています。全寮制の年間費用は3万4,188ポンド(日本円で約548万円)です。制服はなく、毎週受ける楽器の個人レッスン代は授業料に含まれています。

初等科の授業内容はほかの私立学校と変わりませんが、人数は絞り込まれています。1学年の人数が少ないため、違う学年の生徒が1つのクラスで同時に学んでいます。イギリスの初等教育では飛び級も含め優秀な生徒は先のクラス内容に進めることが多く、なかでも私立の教育内容は公立に比べ自由度が高いためこういった授業形態が可能になっています。同校の中高等科に進学する際には、特別な試験はありません。

全寮制では充実した楽器用の練習室をいつでも使えるため、やる気のある生徒にとっては朝や放課後もずっと練習できる素晴らしい環境といえます。校内やロンドン市内でも学校主催のコンサートが頻繁に開催されるなど、演奏者の育成に力を入れています。生徒たちは個人でもさまざまなコンクールに参加し、学校を休んで海外遠征に行くこともあります。

まとめ

子どもの芸術的能力を伸ばすのに最適といえそうなイギリスのタレンティッド・ボーディングスクールですが、留意しておいたほうがよいこともあります。

1つは、生徒たちは世界レベルの講師による質の高いレッスンを受け両校とも数多くの芸術家を輩出していますが、子どもがその年齢で親元を離れることは簡単ではありません。学校のサポートが充実しているとはいえ強制的にやらせる教育ではないので、何よりも本人の自主性とやる気が不可欠といえます。

もう1つは、初等科の授業内容はほかの私立と同じですが、特別な受験準備はしないという点です。自分が得意とするタレンティッドな練習に集中するあまり、一般的な学業はそこまで頑張らない生徒も一定数存在します。一方で、初等科終了後に中高等科に進学する時には一般的な学力も求められるのです。

芸術に特化したボーディングスクールには、こういった特殊な背景があることも知っておく必要があると思います。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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