国連ミッションがそのまま教育方針に。グローバル人材を育てるUnited Nations International School
自国を象徴するカラフルな民族衣装に身を包み、大きな声で歌い始めるのはUnited Nations International School(国連インターナショナルスクール)の生徒たち。毎年秋に行われる「国連デー」での一コマです。
United Nations International School(以後、UNIS)はニューヨークのマンハッタンとクイーンズにある私立学校。1947年に国連本部に勤務する家族たちが、「子どもたちが自国の文化やアイデンティティを維持でき、それぞれの国に帰ってもスムーズに教育が続けられるように」との願いを込めて設立されました。その後年々学年が増え、今では国連職員以外の生徒も全体の45%を占めています。
UNISの特徴は人権を守り、人種、性別、宗教や言葉の違いを越えて地球人を育てるカリキュラム。125カ国から90言語を話す子どもたちが集まるようすはまさに国連の姿を反映しています。国連のミッションと通常の教科がバランスよくブレンドされた授業が好評なUNISでは、どのような授業が展開されているのでしょうか?
目次
計画から実行まですべて子どもたちがプロデュースする「ユニセフ・レストラン」
世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関のUNICEF(ユニセフ)。UNISでは、国連のさまざまな機関を学ぶだけでなく、実際に行動して学びを深めるのが特徴です。
それを象徴するプロジェクトラーニングの一例として、小学校1~2年生がユニセフの活動を学びながら、理科の栄養学や食品群の単元を学ぶ「ユニセフ・レストラン」プロジェクトをご紹介します。
子どもたちが自らの手で一日だけのレストランを開き、そこで得た収益をユニセフに寄付するこのプロジェクトは、企画から運営まですべて子どもたちだけで実行されたというから驚き。子どもたちは学校の庭で育てた野菜を収穫し、メニューを決め、そして自分たちの手で調理していきます。
レストランに飾るポスターから、テーブルクロスやメニューもすべて手作り。このメニューも英語で書かれている他に外国語の授業で学ぶスペイン語とフランス語を駆使して書かれているのです。
そして、待ちに待ったレストランのオープン当日。子どもたちは盛り付け係、配膳係などチームを組んでレストランの運営をこなしていきます。保護者に手作りのレストランの入場券を販売し寄付金を集めました。その翌日、算数の授業でみんなで売上げを計算し、400ドルをユニセフに寄付することができました。
このプロジェクトを通じて、図工、理科、算数、言語、外国語で学習したことを総合的に活かすと同時に、自分たちで計画を立てる力やチームワークで物事を進めていく力を養うことができたのです。
一人ひとりが自分で考え、答えを導き出す
UNISでは、小学1年生のクラスでは平和について学び、2年生では子どもの人権や世界に変化をもたらした偉人についても勉強します。子どもたちは「平和とはなにか」というような抽象的な概念について一人ひとりが考え、公平さや平等さについてさまざまな質問を投げかけながら自分たちの答えを導いています。
例えば、「権利と責任」という単元を勉強している時に、生徒たちは「子どもたちにも勉強する権利があること」を知りました。また、この権利について世界の統計を見てみると、パキスタンでは学校に行ける女の子の数が、男の子の数より圧倒的に少ないことがわかったのです。
この状況から、子どもたちはなぜこの問題が生まれるのかを探し始めました。その理由を発見し、クラスで議論した結果、この問題を多くの人たちに共有していくことが大切だという話し合いになりました。そして子どもたちは、なぜパキスタンの女の子たちが教育を受けづらいのかをレポートにまとめ、他の生徒たちに発表したのです。
どんなに違うバックグラウンドを持つ人でも、共通点を探し、理解し、受け入れることの重要性を教えるUNIS。いまさまざまな問題で揺れているアメリカですが、人種、性別、宗教や言葉の違いを受け入れ、対話を通し問題を解決していく教育方針は、今のアメリカに一番必要なものかもしれません。
学校ウェブサイト:https://www.unis.org/
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
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