ドイツの子どもが最初に見る「文字のない絵本」!子どもの創造力や思考力を育成
ドイツで幼児本の定番といえば文字が一切ない絵本「Wimmelbuch(ヴィメルブーフ)」で、1ページに小さく細かい絵がたくさん詰まっています。絵のなかにはテーマやストーリー、四季があり、子どもと一緒に物語を作ったり問いかけたりして、創造力や思考力を膨らませながら常に新しい発見ができます。ドイツの子どもなら誰でも手にしたことがある「文字のない絵本」は言語に関係なく楽しめるため、バイリンガル家庭でも愛読されています。
目次
子どもたちが読解力を身につけるまでの手助けに
ヴィメルブーフはドイツの一般的な書店で売られていて、さまざまなシリーズを取り揃えています。知育本の1つとされ、読み手が変わればストーリーも変わるため、子どもの創造力や思考力、発想力を育てることができる定番の絵本として人気です。親が子どもと一緒に物語を作ったり互いに問いかけたりして、常に新しい発見がある本といえます。
ヴィメルブーフを直訳すると、ヴィメルは「にぎやか、うごめく、うようよしている」という意味で、ブーフは「本」。その名の通り1ページにぎっしりと人や動物、建物、植物、乗り物、自然などが描かれていて、大人が見ているだけでも楽しくなるような本です。 さまざまな物を認識できてそれらの名前がわかるようになる1歳くらいから、文字が読める小学生くらいまでの子どもたちに読まれていて、ドイツでは教育的価値があると考えられています。
ヴィメルブーフに描かれているのは特別なものではなく、四季を取り入れた街並みであったり、日常の風景であったりと、その状況について大人と子どもが一緒に物語を発展させることができるような絵です。子どもたちが読解力を身につけるまでの手助けとなり、創造力、思考力、発想力などを養うことができるといわれています。
絵本を見ながら年齢別の対話を通じて子どものさまざまな力を養う
近年世界で推奨されている絵本の読み聞かせ方法として、子どもと対話しながら本のストーリーを追っていく「対話式リーディング」がありますが、ヴィメルブーフでも子どもとの対話は欠かせません。では具体的にどのように絵本を楽しみ子どもの成長につなげていくのか、年齢別に紹介します。
1:視覚と理解力
まずは、子どもが正しく「見て」自由に「思考・創造する」土台作りをします。
〇対象年齢:18か月~3歳
① 発見する
「ネコはどこかな?」「アイスを食べている子どもはどこ?」
② 物を見つけて名前をつける
「このページにはなんの動物がいる?」
③ 動きを認識する
「この子は何をしているの?」
〇対象年齢:4~7歳
① 特徴を分類する
「毛が生えている動物はどこにいる?」
「どの動物にしっぽが生えているの?」
「飛ぶことができる動物は?」
② 正確に数を数える
「車は何台見える?」「動物は何匹いる?」
③ 自然を理解し説明する
「これは何の季節?どうしてそう思う?」
④ 状況を想像する
「どうしてこの飛行機はまだ飛ばないのかな?」
「なぜこの子は泣いているの?」
2:聴覚と表現力
本から音は出ていませんが、音源を探し絵で表現された音を想像します。
〇1~3歳
① 音源を探す
(大人が猫の鳴きまねや、車のエンジン音を真似して)「どこから聞こえる?」
〇4~7歳
① 音を表現する
(大人が風で木の葉が落ちる絵を指さし)「どんな音が聞こえる?」
3:想像力と感性、情報処理力
想像力と感性を育て、情報処理を通じて大人と子どもの話が繋がるようにしていきます。
〇5歳以上
① 音を分類し表現する
「あなたには聞こえないもの」というゲームをしながら音の種類を理解します。
(子どもが絵のなかから1つ音の出るものを選び、大人が質問しながらそれを当てる)
「それは動物の音ですか?」→「いいえ違います」
「それは機械の音ですか?」→「いいえ違います」
「それは生活の音ですか?」→「はい」
「それは子どもが走る音ですか?」→「いいえ違います」
「それはシャワーの音ですか?」→「はいそうです」
② 創造力を刺激する
情報処理をし、思考力、創造力を高めます。
(大人と子どもが交互に話が繋がるように会話していく)
大人「ここはドイツで一番大きい動物園です」
子ども「今日は春休みでたくさんの子どもたちが来ています」
大人「今はもう昼食の時間でお母さんは子どもにご飯を食べようと言っていますが、子どもはまだ動物が見たい、と言って聞きません」
子ども「子どもの名前はダニエル、4歳の男の子です」
このように、まずは親子でやってみてはいかがでしょうか。
まとめ
こういったヴィメルブーフを通じた対話のように、生まれてから子どもが最初に目にした情報が脳の成長に大きな影響を与えていくと考えられています。絵のない絵本で視覚を鍛えることによって子どもの脳が活性化し、創造力や思考力、集中力、情報処理能力など成長における重要な能力を高めていくことが可能です。
ドイツではヴィメルブーフは「小さな子どもの教科書」ともいわれ、語学力を伸ばすことも証明されています。 子どもの人数の分だけ創造力が生まれ、さらにそれは本を開くたびに毎回異なる対話となるため、1冊のなかに無限の物語が詰まった絵本といえそうです。
<参照URL>
https://www.wimmlingen.de/
https://www.wimmel-bilderbuch.de/wimmelbuecher/fuer-kinder/
執筆者/ドレーゼン志穂
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。