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STEM教育として注目され、グローバル規模で参加急増中!!世界最大級のロボコン「WRO」タイ国際大会・最新レポート【前編】

STEM教育として注目され、グローバル規模で参加急増中!!世界最大級のロボコン「WRO」タイ国際大会・最新レポート【前編】

国際ロボットコンテスト「WRO (World Robot Olympiad)」は、世界70以上の国と地域から6万人以上の子どもたちが参加する世界最大級の教育コンテストです。

グローバルでSTEM教育への関心が高まるなか、日本でも「プログラミング教育必修化」に伴い、注目が集まる「WRO」。今回は「WRO Japan実行委員会」を企画・運営している筆者が、2018年11月にタイ・チェンマイで開催された最新の国際大会レポートを前後編にわけて、STEM教育へ導くヒントなどと共にお伝えします。

「ロボットコンテスト」とは?

「ロボットコンテスト=ロボコン」という言葉を聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか。実は、日本でも「ロボコンマガジン」という専門誌があり、国内で年間大小200件以上のロボコンが開催されるほど盛んになっています(同社調べ)。

2020年から始まるプログラミング教育の必修化を控え、近年のロボコン参加者はより「低年齢化」しつつ急増、その注目度の高さも伺えます。

ロボティクスを通じSTEM教育を推進する「WRO」

そのロボコンのなかで、国内で大規模なうちの一つが「WRO」です。今から15年前、2004年にシンガポールサイエンスセンターの発案から13ヶ国の参加で開催、以降広がりを続け、現在は世界70以上の国と地域へエントリーが拡大しています。

6〜25歳を対象に、ロボットを活用し科学技術を身近に体験できる場を提供することで、青少年の創造性や問題解決力を図りつつ、ダイバーシティ(多様性)に富んだ学びの場として、世界最大級の国際ロボコンに成長中です。

日本においては「NPO法人WRO Japan」が国内の大会企画・運営・普及啓発を担い、初学者も参加しやすいように参加費も一人2,500円と安価に設定されています。子どもたち2~3人でチームを組みロボットを製作、プログラムにより自動制御する技術を競い合います。

毎年開催されるこの大会での参加者数は、国内では約6,000人、世界ではその10倍の6万人超にも上ります。

また「大会原則」として、「勝ち負けにこだわるのでなく、どれだけ学びを得るかにフォーカスする」、「競い学ぶと共に楽しむ」、「チャレンジを重ねて失敗を体験するのは必要過程で、素晴らしいこと」という方針を掲げ、子どもたちに必要とされるスキルの醸成につなげているところも優れている点でしょう。

下記はWRO国際が提示する倫理規定「WRO Ethics Code」の一部です。出場選手は、この内容を理解し合意することを求められます。

“It is not whether you win or lose, but how much you learn that counts.”
We are participating in a competition.
We like to win. We want to learn.
And we also want to have fun.
Sometimes we fail and that is OK.
Original ideas come from failing.
Winning is nice but failing is part of our journey.

「大事なことは勝ち負けの結果ではなく、どれだけ学びを得たかということ。」
私たちは競技に参加しています。
私たちは勝つことが好きです。私たちは学びたいです。
そして私たちは楽しみたいです。
私たちはときどき失敗しますが、それは良いのです。
オリジナルのアイデアは失敗から生まれるのです。
勝つことは素晴らしいですが、失敗することも我々の挑戦の過程の一部なのです。

●「WRO Ethics Code」より抜粋

「WRO」で行われる競技について

2018年の「WRO」では上述の年齢を対象に、特徴が異なる5種類の競技が実施されました。それらのうち、レギュラーとオープンカテゴリーに関しては、年齢別で小中高校生ごとに部門がわかれています。

さらに、この大会では市販のロボット教材であるLEGO社の「マインドストーム」を利用し、楽しく簡単にロボティクスを始め、競い学び合うことも推進している点が大きな特徴と言えます。

国内予選から国際大会参加までの流れ

競技種類に応じ多少異なりますが、参加には「1、予選(地区やビデオ審査など)→2、全国(国内決勝大会)→3、世界(国際大会)」とおおまかに3段階、技術レベルに応じた「挑戦ステージ」が用意されています。

例えば、WRO Japanで競技人口が一番多い「レギュラーカテゴリー(主にロボット制御を競う競技)」に参加するとエントリー後、最寄りの公認地区予選に挑戦。現在は7〜8月にかけて全国41地区で開催されています。

予選で上位成績を収めると、9月開催の「国内決勝大会」への出場権を獲得、さらにそこで優秀チームに選出されると、11月開催の国際大会へ「日本代表チーム」として出場権利を得られるのです。国際大会では「国際交流」が含まれていることも特徴的な点です。

国際大会までのスケジュール

2018年の「WRO」国際大会はタイで開催!!

国際大会は毎年11月、各国の選出チームが集まります。年ごとに異なる国がホストをつとめ2018年はタイ、第2の都市・チェンマイで開催されました。

小中高校生を中心とした約500チーム1,200人以上が集結。開催地はオリンピックのように立候補制、近年は STEM教育への関心に伴い、「国家レベル」でこの科学技術の教育祭典に力が入れられています。教育や科学技術に加え、経済や観光に携わる政府機関が積極的に動くほどです。

タイでは「教育大臣」ティラキアット氏、「チェンマイ県知事」レムスワン氏などが来臨しました。教育大臣の開会挨拶で開始早々、再度この大会をタイで開催したいとの言葉が出るほどの歓迎ぶりでした。

WRO2018タイ国際大会ハイライト(約10分)

国内の各競技会は1日ですが、国際大会では規模が大きく金・土・日の3日間。開催地によっては、移動を含め約1週間の海外遠征となることも。参考までに、タイでは以下のようになりました。

11/15木曜 日本出国→タイ到着
11/16金曜 競技準備(試走等)→開会式
11/17土曜 競技会→フレンドシップナイト
11/18日曜 競技会→閉会式
11/19月曜 現地視察→タイ出発
11/20火曜 日本帰国

大会の中日である土曜日の夜は、世界中から集ったチーム同士が交流する「フレンドシップナイト」が行われ、イベントに彩られた濃密な3日間となっています。

ハードスケジュールながらも、決勝大会に選出されるほどのタフな代表チームだからこそ、熱気あふれる楽しい企画となるのでしょう。

WROに参加するのは、どんな子どもたち?

そして、気になるのは大会に参加した子どもたち。一体どんな子どもが参加しているのでしょうか。

以前は、学校のパソコンや科学部といった部活動やクラブ、地元のNPOなどが開催する地域クラブからのエントリーが多数でした。しかしここ数年、小学生向けに増えているロボットやプログラミングの塾や教室から、チームを組みエントリーするケースが増加中。

さらに、近くに教室がない子どもたちは「家庭学習教材」を使い準備、親御さんがコーチとなり、お友だちとのペアでチャレンジするチームも毎年何組か存在します。

プログラミング教育の必修化が迫る昨今、早い段階で子どもに楽しく、ICT(Information Communication Technology)に慣れ親しませる家庭が増えているようです。

大会参加にかかる費用は全て参加者の自己負担。しかし、その点はサッカーやピアノなど他の習い事と同様です。

国際大会へ選出されると海外渡航費の負担が大きくなりますが、近年では、多くの自治体がICT人材育成を応援する潮流で、地元企業からのスポンサーシップやクラウドファンディングなどで支援を得るチームも増えています。

まとめ

プログラミング教育の必修化で注目度が上がるロボコン。そのなかでも、大規模なWROの概要や出場経過についてレポートしました。

後編では競技の一つ「オープンカテゴリー」についての紹介、また優秀な参加チームのメンバーや保護者・先生(コーチ・指導者)から伺ったインタビュー詳細や教育の秘訣などをお届けします。

また、そこから得られた子どもたちと保護者との関わり方、そこから見える将来性を見据えた導き方などについてもお伝えします。

●参考リンク
WRO Japan
WRO 国際

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