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STEM教育として注目され、グローバル規模で参加急増中!!世界最大級のロボコン「WRO」タイ国際大会・最新レポート【後編】

STEM教育として注目され、グローバル規模で参加急増中!!世界最大級のロボコン「WRO」タイ国際大会・最新レポート【後編】

後編では国際大会で注目度が高まりつつあり、創造性と問題解決力にフォーカスしている「オープンカテゴリー」の競技やそこに参加した各国のチームをご紹介します。

さらに国際大会ならではの多種多様の国と文化が交錯したなかでも共通した、世界トップを目指す子どもたちと親の関わり方、そしてSTEM教育のみならず、グローバル化へ対応できる子どもを育てる秘訣など、保護者や指導者のインタビューや大会で見られたものなどから紐解いていきたいと思います。

注目度が高いWROの競技部門「オープンカテゴリー」とは?

今回の大会で実施された5種類の競技の一つ「オープンカテゴリー」。毎年変わる「テーマ」に沿って解決課題を設定、その方法を企画・設計して、ロボットや仕組みなどをプレゼンテーションするものです。

子どもたちは課題や開発ロボット(もしくはシステム)、提案をまとめたポスターなどについて「英語」で発表します。テクノロジーを活用し課題解決に挑むことは、生きる力を養うことにつながると言えます。

今回は「食糧問題」がテーマ。国連が提要するSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発)の観点を含むことが求められました。


世界から集まった多種多様の「96色のアイデア」!!

2018年は、世界から小中高校生の96チームが集結。参加国や文化、慣習や暮らしなど多様な背景のなか、同テーマでも十人十色ならぬ、96チーム96色のプロジェクトが並ぶ様は圧巻、それぞれ異なる視点は非常に興味深いものとなりました。

一例としては、インドの高校生チーム「SaboTage」は、食品の梱包に使われるプラスチックなどの危険性について触れ、「解決案」としてインド伝統のバナナの皮で自動梱包する巨大な機械を企画制作してきました。

初参加で「世界5位」に駆け上がったマレーシア!

マレーシアの小学生チーム「I-FARMER」ブースでは、メンバーのお母さんからとても熱心な説明を受けました。

「学校でコンピューターを学んでいるが、部活でコーディング(Coding)学習を深めています。オープンカテゴリーは『ICTを体験できること』、『リサーチで社会問題への意識も高まるSTEMプロジェクトであること』、『オープンエンド型で答えが多様な取り組みが面白い』そんな風に思い、初めて大会へ挑戦しました。しかし、スタート時に指導依頼できるコーチが見つからず、保護者が協力し今のコーチと出会ったのです」

そんな保護者の理解とサポート、子どもの体験機会を作ろうとする熱い想いに感銘しました。そして毎週末を費やし取り組んだ結果、初出場で「マレーシア代表」に選出。国際大会への切符を手に入れたのです!

さらに、国際大会でも堂々の5位入賞! 過去の実績に左右されず、どのチームも頑張った分チャンスがあるのはWROの魅力だと言えます。

「ロボティクス」ってカッコイイ!! 女の子も夢中になる表現の場!

フィリピンから参加のブースには女子中学生3人組。「フィリピン国内115チームのなかから選ばれ、今回の参加機会をもらいました!」と、笑顔で語ってくれました。

彼女たちの学校では、全生徒が4年間ICTの授業を受け、コンピューター利用に始まり、後期にはロボティクスまで学ぶそう。他にユニークな点として、学校では全員が4か国語ほど学び、彼女たちもラテン語やスペイン語、それに日本語も話せるとのこと!!

ロボコンへの参加理由を聞くと「だってカッコイイじゃん!」と一言。ついでに将来の夢は「お医者さん」や「料理家」と答えてくれました。

学んだ創造力や表現力を活かし、自分の専門分野でテクノロジーを活用し活躍する将来を考え非常に頼もしく思いました。そして、彼女たちが心から楽しみ、取り組んでいる様子にも喜びを貰いました。

子どもにとって「初めての学校と先生である」ことの重要さ

中国の小学生ブースでは、きれいな英語でプレゼンテーションが披露されていました。

立ち寄った「Emmet Future Food Engineers(小学校)」の理科教諭(カナダ人)、Chagui先生によれば、中国では既に小中学校でプログラミング教育が必修化されているそう。

そして、一人っ子政策の影響もあり保護者は非常に教育熱心、新たな学びに加わったテクノロジー習得への注目も高いと語ってくれました。

また、グローバル化が加速する未来では「国・地域」と言った境の概念も薄まり、国単位ではない「地球人」という単位で社会問題を捉えていく視点が必要とも指摘。

ちなみに、中国で教えるChargui先生がカナダブースを訪れると、そちらの先生は中国人だったそうで、「教職もグローバルな時代です」とおっしゃっていました。

それでも今後、子どもの初めて出会う学び場は家庭で、初めての先生が親であることは普遍でしょう。「子どもと楽しみながら学びの道を伴走する」、その重要さを各国のパッションあふれる保護者や指導者との出会いにより改めて認識させられました。

世界のトップへ立つために必要な「心身のタフさ」

そして大会出場にあたっては、開催国までの移動や毎日のスケジュールも相当ハードです。

今回はタイだったので東京から7時間程度でしたが、2017年のコスタリカは移動だけで軽く24時間超え。さらに、期間中は朝6:30に宿泊先を出発、競技や交流行事などを終え、ホテルへ戻るのが21:00過ぎの日々が3日間。

トップチームには、心身のタフさが求められますが、各国で選抜された子どもたちだからこそか、それも楽しめるのだろうかと感じました。

「きっかけを作る」親と「成功体験を積んだ」子どもたち

オープンカテゴリーを中心に見てきましたが、どの国の小中学生も落ち着き、コミュニケーションをしっかりとっています。

国際大会へ選出されるほどとは言え「学び始めのタイミング」があったはずで、どんなキッカケで優秀な成長へと至ったのでしょうか。その疑問と秘訣をいろいろな保護者に尋ねてみました。

多くの声として、「今後ICTは重要になるので早期から取り組ませたかった」という想いと、自主的に取り組ませるため、まず楽しそうなプログラミングやモノ創りのワークショップへ参加・体験させるというスタートがありました。

子どもたちが「自らの手を動かすモノ創り」で実感を得て、その過程で親や先生から褒められる。そこで「自分ってロボットとか得意!?」という、「自信」や「成功体験」を積むようです。

そして「もっとやりたい!」となれば、次なる用意として、地域クラブや塾などの課外活動、近くでサポートしてもらえそうな企業エンジニアのメンターを探すなど、継続的な取り組みの環境を整えてきたようです。

子どもと一緒に「チャレンジすること」が教育の道しるべ!?

また保護者たちにとって、ロボットやプログラミングは自身が学んでいない科目なだけに悩まれた話も出ました。

しかし、「一緒に新しいチャレンジを面白がり、学ぼう!」という気持ちと「興味」をもって取り組むこと、そして親が子どもたちの「チャレンジを認め」、「たくさん褒める」ことが重要かつ大事であると言うことでした。

ちなみに、受験勉強に忙しい小学生の家庭(日本の都市部)に伺った際、将来のリテラシーとしてのICTというより、受験勉強のストレス発散を兼ねた習い事として、手を動かし楽しむ「ロボット・プログラミング」を始めたところ、子どもが夢中になり続けているというケースもありました。

いずれにしても国際大会と言えど、長期に渡る特別教育を受けているわけでも、親が全てエンジニアの家庭ばかりではありません。高校生にもなると、中学から学校単位でチャレンジを続けているチームも多そうですが、小学生は取り組み始めて1年未満の子どもたちが多く見受けられます。

つまり、誰にでも国際大会へのチャンスはあり、果敢なチャレンジ自体が大事なのです。

2018年「WRO」の競技結果は?

今回の競技結果は大会HPでも確認できます。競技種類にもよりますが、近年はマレーシア・タイ・台湾・ロシアなどが強豪国として入賞。オープンカテゴリーは下記のYouTubeチャンネルに、各部門上位10チームの事前審査用ビデオが公開されています。

国際大会の入賞には、どのようなアイデアや魅せ方が求められるか、そして世界レベルの子どもたちの強い思いに胸を打たれるかもしれません。

【WRO2018 競技結果】

●リンクhttp://www.wro2018.org/Result%20Scores%20The%20WRO2018%20(Official).pdf

【オープンカテゴリー事前審査用ビデオ】
エレメンタリー部門(小学校)
ジュニア部門(中学校)
シニア部門(高校)

まとめ

世界を舞台に頑張る子どもたちをレポートしましたが、学びを考える「きっかけ」として、また子育てに活かしていただければ幸いです。そして、STEM教育を促し競い合い楽しく学ぶ機会として、「WRO」への参加検討もよいかもしれません。

今年のルールはすでに発表済み、エントリー開始は春先を予定中です。また、3月下旬にはWRO参加希望者に向けた新人戦とし「アフレルスプリングカップ」という大会も開催。まずこれをチャレンジの第一歩としてもよいでしょう。

WRO Japan
WRO 国際
アフレルスプリングカップ(WROに向けた春の新人戦)

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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